すぐそこまで迫っている、ECサイトにおけるAI決済時代到来に備えて、何をするべきか

公開日:2026年03月26日

更新日:2026年03月26日

すぐそこまで迫っている、ECサイトにおけるAI決済時代到来に備えて、何をするべきか

ここ数年でAIは一気に生活に浸透してきている。ECサイトにおいても、商品検索、商品比較、等の過程でAIが顧客の判断に影響を与えてきており、AIは顧客の意思決定の簡略化をサポートしている。そして、そのAIによる簡略化の流れが「決済」という顧客の意思決定が欠かせなかった領域にまで迫ってきている。

このような変化の到来により、事業者は新たな対応が求められている。AIは信頼性や誤作動といった側面でのリスクも無視できず、AIへの対策だけでなく、業務をどこまでを人が担い、どこからをAIに任せるのか等、明確な根拠のある判断軸を持つことが今後ますます重要になってきている。

本記事では、近年の購買行動でどのようにAIが活用されているのかを店頭やECサイト等環境に分けて触れるとともに、実際の事例も紹介していく。さらに、今後どのようにAI決済時代と向き合うべきかを整理したい。

AI決済とは何か

AI決済の3つの論点

AI決済とは、これまで顧客自身の意思をもとに操作が必要であった決済作業を、AIの活用により自動的に実行する仕組みだ。あらかじめ設定された条件のもとでAIがエージェントとなり決済を済ませるものである。また広義な意味でのAI決済では、AIを活用した事業者側の対応も含まれている。そのため、本記事ではAI決済を「店頭におけるAI決済」、「ECサイトにおけるAI決済」、「事業者側におけるAI決済」の3つの論点に分けて考えていく。

AI決済が登場した背景

黎明期のAI、と言っても今からまだ数年前の話ではあるが、利用者側が事前に設定した条件を満たしたときに成立する規則的なプログラムを設定してあるものが多く、事前の想定として設定されていない状況への対応能力には欠けていた。その後、データ駆動型AIやLLMと呼ばれる、与えたデータだけでなくインターネット上の大量のデータを学習させることで、AIが学習内容を踏まえて状況に合わせた対応を柔軟にとる体系と進化した。そして、近年注目を集める「AIエージェント」と呼ばれる体系に移り、自律的な目標達成が可能となった。このAIの進化により、店舗やECサイト等それぞれの環境で多様な役割を担う、人間の代わり、さらには人間を超越した存在となりつつあるのである。(※1)

AI決済の現状と事例

店頭におけるAI決済

店頭におけるAI決済は、現時点では無人店舗(≠セルフレジ)とほぼ同義となってきつつある。従来の店頭での決済は作業工程や操作が多く、長時間営業を求められる店舗では人件費が大きな重荷となっていた。

そこで登場したAIを活用した無人店舗(≒AI決済店舗)では、AI活用により各段に効率と信頼性が上がってきている。AIによる商品認証精度も99%以上にまで向上しており、将来的には入退店時の顧客による操作を完全に無くした店舗も展開されるだろう。

Amazon Go

Amazon Go

出典:(2026年1月まで)

AI決済店舗の代表的な事例として思いつくのはAmazon Goだろう。2016年に1号店を開店し、レジ精算を必要としない買い物体験を実現可能として注目を集めた。顧客は入店後、商品を手にしたまま精算作業を一切必要とせず退店できる。顧客をAIが追跡し、カメラやセンサーとAIの連携により購入商品を認識する。またこれらをリアルタイムで事前にインストールされている専用アプリと連携させることにより、顧客が退店ゲートを通ると同時にAmazonアカウントで決済されるのである。 (※2)

しかし、世間の注目を集めたものの2026年1月末、Amazon Goは全店舗を閉鎖することが明らかになった。

TOUCH TO GO

TOUCH TO GO

出典:

JR東日本スタートアップとサインポストの共同出資により設立されたTOUCH TO GOは日本で初めて展開されたAI決済店舗である。2022年度にサービスの全国提供を開始後、2024年10月には200店舗以上の導入を実現した。天井設置の3Dカメラやセンサーにより得られたデータをAIが即座に分析し、商品との対応付けをすることで99.2%の商品識別精度を実現している。現状ではこのリストアップまでの自動化にAIが携わっており、決済自体は人間が主導しなければならないため、厳密にはAI決済と呼べる段階には達しておらずあくまでAIを活用した実店舗の事例である。(※3)

ウォークスルー型無人店舗(インタセクト・コミュニケーションズ)

ウォークスルー型無人店舗(インタセクト・コミュニケーションズ)

出典:

2025年7月に開催された「未来モノづくり国際EXPO2025」に出展されたインタセクト・コミュニケーションズのウォークスルー店舗は、インバウンド対応のAI無人店舗と銘打ちデモを実施した。このウォークスルー型無人店舗も商品認識方法は前述したAmazon GoやTOUCH TO GO同様にカメラやセンサーとAIの連携である。専用アプリの入店QRコードで自動改札を通り、自由に商品を選択して退店すれば自動決済が完了し、数秒後にレシートが配信される。大阪公立大学 森之宮キャンパスやインバウンド向けホテル等での導入実績があり、全国への展開も期待されている。(※4)

ECサイトにおけるAI決済

従来、ECサイトでの購入・決済では、販売されている膨大な商品から顧客自身で欲しい商品を探し出し、選択し、購入する必要があった。

近年のECサイトでは、AI決済により消費者の意思決定を超えた購買体験の実現が目前まで迫ってきている。すでに一部は実現されているが、例えば、顧客が設定した条件を満たすものを探し出し、予約や決済等を人の介入なく完結させる。多くの情報を確認して予約枠を探す必要はなく、条件に合う枠が見つかれば瞬時に予約が完了するためサイトを見張る必要もないのである。他にも、サブスク継続・中断等もAIに条件を与えたうえで任せることができる。利用履歴や在庫残量等、人が確認するには時間のかかる膨大な情報を確認したうえで顧客の条件に対する結果を実行するため、顧客の満足する結果を効率的に提供できるのである。

Amazon Dash Replenishment

Amazon Dash Replenishment

出典:

2016年ごろからAmazonが提供する「Dash Replenishment」は、ECサイトに導入されたAI決済の元祖だろう。2015年3月に登場したDash Buttonが家庭に貼れるワンプッシュ再注文ボタンとして一躍注目を集め、その派生サービスとして誕生した。各社の対応機器とAmazonのクラウドサービスを連携させることで対応機器での商品消費状況に合わせてAmazon経由で自動的に再注文されるサービスである。例えばウォーターサーバーとの連携では、顧客が設定した残量に達すると自動的に決済までを完了し、自動注文による過剰注文等の不安を解消するよう確認通知が届く。定期購入と比較すると、予想よりも消費が早く、または遅くなった際の配送日再設定も不要であり、顧客の手間が大きく削減されるのである。(※5)

ChatGPT Instant Checkout

ChatGPT Instant Checkout

出典:

2025年9月末、ChatGPTを運営するOpenAIが発表した「Instant Checkout」機能は、チャット内でユーザーが欲しい商品を伝えると関連商品が提示され、その中に気に入ったものがあれば「BUY(購入)」を押し、数回に確認作業を行えば購入を完了できるサービスである。顧客はチャット画面以外への遷移が不要となり、さらに抽象的な会話文等の入力ベースでもECモール横断的な商品提案が可能なためシームレスな購入手続が可能である。ChatGPTの週間利用者は2025年8月時点で7億人に達しており、この巨大な利用者基盤を生かした新たな収入源として展開することを目指している。EtsyおよびGlossierやSKIMS、Spanx等一部のShopify加盟店の単一アイテム購入に対応して米国のみで展開されているが、現時点では決済までの完全自動化は行われていない。2026年には2025年10月にACP採用を発表したPaypalとの統合による決済の多様化やShopifyの100万店舗以上への拡大、複数商品カート機能も見据えており、さらに将来的にはAI自動購入にまで展開予定である。 (※6)

Geminiチャット内購入

前述したInstant Checkoutに類似した事例には、2026年1月にGoogleが発表したGeminiのチャットボットショッピング機能が挙げられる。この仕組みでは、Google検索の「AIモード」や「Geminiアプリ」内で顧客が商品を探すために使ったGeminiチャットを離れることなく購入手続まで進められる仕組みである。2026年1月現在はWalmartやShopify、Wayfair等大手小売業者がGemini内購入に対応したことを発表しているが、Instant Checkout同様、現時点では決済までの自動化は行われていない。当初は米国ユーザーのみが利用可能で、今後数ヶ月で国際展開やPayPalへの対応を計画していると報告されている。さらに、連携店舗とGoogleのアカウント連携によるオンラインショッピングカートの統合も言及されている。例えばWalmartの場合、WalmartとGoogleのアカウントを連携した顧客は過去の購入履歴に基づいたおすすめ機能等を活用した買い物が可能であり、チャットを通じて購入した商品は既存のWalmartやグループ会社であるSam’s clubのオンラインショッピングカートとの統合も実装すると発表されている。つまり、注文履歴や配送情報等の確認はWalmartの画面で従来通りにでき、チャットが買い物の入り口の1つとして、新たに開設されるということだ。 (※7)

事業者側のAI決済

事業者が利用するAI決済には、AI審査やAI不正検知等、膨大なデータからの分析や情報整理により多くの作業工程や時間がかかる作業を効率化するものが多く挙げられる。

さらに、AI決済が浸透するにつれて事業者にはAIエージェントによる決済を前提とした対応が求められる。今後は決済操作の背後に人がいるのか、それとも個人から委託されたAIエージェントがいるのかを厳密に区別できなくなるだろう。そこで重要なのは、実行主体の明瞭化ではなく、その決済が正当性を判断して不正や悪意を持つAIエージェントを排除することであり、受け入れるべき取引と排除すべき取引を見極める設計づくりである。

三菱UFJニコス

三菱UFJニコス

出典:

2023年4月より、三菱UFJニコスではクレジットカードの不正利用検知にAIを導入している。従来は不正抑止チームが加盟店との過去の取引データ等を分析し、日々変化する不正のトレンドに合わせて毎月2,000件以上追加してきた。このノウハウを生かし、不正利用を発見した際にAIに学習させるのと同時に、AIの判断をすぐに反映させる仕組みにより最新の不正手口を学習したAIによる不正の確度提示を実現させた。不正被害件数や金額は導入前と比較し3割以上削減し、業界最高水準の不正利用検知率を誇っている。

auじぶん銀行株式会社

auじぶん銀行株式会社

出典:

auじぶん銀行はインターネットバンキングにおける不正送金対策として、株式会社ラックが提供する「AIゼロクラウド」を導入した。「AIゼロフラウド」は、AIを活用して過去の取引データから不正パターンを学習し、さらに継続的なアップデートにより、従来のルールベース型では見逃されやすかった不正パターンにも対応可能である。不正送金のリスクが高いと検知された場合には一時保留や追加認証を行う仕組みを稼働させており、検知だけでなく防止策も進められている。

AP2・Agent Payments Protocol(Google)

AP2・Agent Payments Protocol(Google)

出典:

AP2・Agent Payments Protocolは、Googleが開発した新たなAIエージェント決済規格で、すでにSalesforceやShopify、Etsy等60社以上での導入が進められている。AIエージェントが顧客の直接的な操作を必要とせずにオンライン取引を完結させる標準規格で、透明性の高さや安全性から企業の信頼獲得やセキュリティ問題へもアプローチできるとされている。どんな条件で、誰の意思に基づいたものなのかを記録・判断する枠組みとなっている。

VIC・Visa Intelligent Commerce

VIC・Visa Intelligent Commerce

出典:

2025年11月に発表されたVisaが提供するVisa Intelligent Commerce(VIC)は、前述したAP2同様に、顧客の操作なしで自動的に購入手続までを完了させるAI決済を、より安全・効率的に実現させるための総合的な仕組みである。急速なデジタル化やオンラインコマース拡大が進むアジア太平洋地域での試験運用が2026年初頭に予定されており、正規の権限を持つAIを見極めることを目指して今後の運用展開に期待が集まっている。

ECサイトにおけるAI決済時代到来に備えて何をするべきか(3つのToDo)

ここまでAI決済の概要と事例を見てきたが、これらのことから、今後本格的に到来してくるであろう、AI決済時代に備えて、EC事業者が何をするべきかを考えていく。現時点でEC事業者が行うべきことは3つに分けることが出来る。1つ目はメリットと課題の把握。2つ目は方針の明確化。3つ目はロードマップの検討だ。それぞれ解説していく。

1.メリットと課題の把握

まず、AI決済のトレンドをしっかり把握し、そのメリットと課題を理解することが重要だ。AIが絡む最先端のテクノロジー分野はちょっとした技術革新によって大きくトレンドが変わるケースも多く、常にそのトレンドにはアンテナを張っておくべきだろう。現時点でのAI決済のメリットと課題を整理していく。

AI決済のメリット

現時点のトレンドや事例から読み取ることが出来るAI決済のメリットは以下の3点だ。

・作業効率化

AI決済導入の最大のメリットは作業効率の向上だろう。決済までの作業が自動化されることで顧客・事業者双方の手間が大幅に削減される。

・安全性や正当性の向上

事業者目線では、不正検知や審査と組み合わせることによって取引の安全性を高めることができる。人の判断だけでは追いつくことのできない取引をリアルタイムで処理し、より早期の対応が可能となる。

・機会損失の防止

条件に基づいた商品探索により顧客は自分で条件に合う商品をすべて調べつくす必要がなくなり、提示された豊富な選択肢を即座に把握することができる。さらに、事業者目線では自社商品を見つけてもらえる機会を得やすくなり、さらに自動的に継続される取引によって購入サイクルが安定されやすいことからも、両者にとって機会損失を防ぐことができる。

AI決済の課題

一方、現時点のトレンドや事例から読み取ることが出来るAI決済の課題は以下の3点だ。

・決済の正当性証明

AIエージェントによる取引が拡大すれば、事業者は誰の意思に基づくものなのかを明確に記録・判断する仕組みが必要となる。事業者にとってすべての取引は対等なものとして受け入れる必要があり、その中で悪意あるものを選択的に排除する仕組みも重要だ。さらに、決済段階を含めすべての購入段階を自動化することを見据えると、AIによる取引において根拠ある意思決定フローを説明可能な形で残し、透明性の担保が必要だ。

・個人情報管理方法やセキュリティ強化

事業者の解消すべき課題には個人情報管理やセキュリティ強化が挙げられる。カード情報等の個人情報や購買履歴等の扱いに関するリスク管理や、これに対する攻撃に向けたセキュリティ強化は欠かせないだろう。AI決済では多くの顧客データを参照し、利用者が増えればそれだけ膨大な情報の管理が必要となるため、情報漏えいや不適切な利用を防ぐための仕組み構築やセキュリティ強化が重要だ。

・提案商品の偏り

AI決済では、AIエージェントが条件に基づいて商品を選定し提案するため、AIが提案する商品に偏りが生じれば、事業者目線では、特定のブランドや商品カテゴリーが不当に優遇・不利益を被るリスクがある。顧客の嗜好に合わせた提案が可能なのはAIを活用する大きなメリットの一つであるが、特定の事業者や過去の購買傾向に強く引き図られることで顧客にとって本来検討可能であった選択肢が提示されないという欠点もある。そのためAI決済では、履歴に基づく提案とフラットな条件提示を切り替える、または併用できるようにする設計が必要だろう。

2.方針の明確化

AI決済の導入や対応に向けて、必ずこれをやらなければならない、と言うものは現時点ではそれほど多くは無い。逆を言えば、各EC事業者の置かれた状況によって、柔軟に方針を検討していく必要があるということだ。ユーザー向けの方針、事業者側の方針のそれぞれを考えていく。

ユーザー向けの方針

AI決済を導入することで、ECサイト上でのユーザー体験をどこまで向上させたいかの方針は明確にしていきたい。決済の領域にまで踏み込まないレベルで留めるのか、決済まで自動で完結する形を可能とするのか、と言う点は非常に大きなポイントとなってくる。

現状では決済までを完全に自動化した事例は限られており、ユーザーにとって実感できる価値は、商品選定の幅広さや情報入力の省略、また画面遷移を無くした買い物の効率化等の利便性向上に留まっている。これはやはり、判断責任やセキュリティ対策、信頼性等の面で、人間の代わりとしてAIエージェントを導入するには依然として壁が高いためだ。

また、どのプラットフォームとの連携を行うかと言う点も重要な判断基準になるだろう。既存の利用者基盤や過去の提供サービスとの連携力を背景に覇権を争うこととなるChatGPTのInstant checkoutやGoogleのGeminiチャット内購入が軸になるが、現時点ではそれほど注目を集めていない第3サービスが勃興する可能性もある。各プラットフォームの特徴と、自社のターゲットや実現したいことを照らし合わせて連携方針を決めていく必要があるだろう。

事業者側の方針

まず、AI決済を導入することで、事業者目線でどのようなことを実現したいのかを整理する必要がある。業務の効率化なのか、不正検知の安全性を高めるのか、エージェント取引の自動化やリアルタイム性を高めるのかなど。AI決済の導入による事業者側のメリットは多岐に渡るため、一つ一つ丁寧に整理する必要があるだろう。そのうえで、それを実現するためのサービスの導入や基盤との連携の検討を進めていく必要がある。

3.ロードマップの検討

ユーザーに対して提供する価値、そして事業者として実現したいことを明確にしたうえで、最後に行うべきToDoは、「いつ」実現するかを考えることだ。AI決済時代の到来は近いものだと示唆するようなサービスの展開も進んでいる一方で、まだ消費者・事業者両面、更にはテクノロジーや倫理の面でのハードルが高いと考える論調も目立つ。

しかし、これまでのテクノロジーの進化の流れを見るに、AI決済時代は間違いなく到来するという前提で準備を進めていくことが必要だろう。ユーザー向けには簡易的に連携が可能なサービスや、事業者向けの不正検知のサービスなど、各サービスを見ると導入のハードルはそこまで高くないものも多くあるため、少額の予算を用意し、トライアル導入は積極的に行い、AI決済の現状を実感を持って体験する必要は早急にあると考えている。そのような経験が、今後検討するべき運用方針や、一気にAI決済時代が到来した時の適応力に差を付けていくはずだ。そのような前提で考えると、大枠のロードマップとしては半年~1年程度でトライアル導入を進め、その後に本格導入を進めるようなスケジュール感が必要になってくるだろう。

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